アマゴ・ヤマメ名称の由来

○アマゴ:「アメノウオ」ありき
琵琶湖産のビワマスが古くより「アメノウオ」(降雨を利用して降湖・遡上する性質から)と呼ばれ、水産上重要視されていた。
このアメノウオの名称が近畿を中心に周辺に伝播する中で、各地の在来のアマゴがアメノウオと混同され、アメノウオに因んだ呼称を与えられた。
例えばコサメ(雨に対する小雨)、アメゴ(アメノウオの小型のもの)等であり、この中の一つが「アマゴ」である。



○ヤマメ:「渓流の女王」は関係ない?
ヤマメの降海型がサクラマスだが、降海型はメスに多い。このため、河川残留型のヤマメのオスと、降海型のサクラマスのメスのペアでの産卵もみられる。
降海型のメスにはペアとなるべき降海型のオスがおらず、河川残留型のオスに河川残留型のメスがペアとならない場合があることから、寡婦を意味する「やもめ」があてられ、これが「ヤマメ」に転じた。
これによれば、通常用いられる「山女」という表記は、その魚体の美しさに由来するものではなく、単に音に漢字をあてただけである。「渓流の女王」とも言われるヤマメだが、その名は美しさからではなく、生態特性に因んだものらしい。




参考:
【アマゴ・ヤマメの文化誌】峠を越えた魚/鈴野藤夫